障害者等による情報の取得及び利用並びに意思疎通の手段の確保    に関する条例  兵庫県は、「誰もが、多様な方法で、理解しやすい情報を手に入れ、交換できる社会の実現」を基本目標の一つとして、ユニバーサル社会づくりを推進している。  情報通信技術が発達し、普及した現代社会においては、多様な情報を容易に取得し、あるいは発信することが可能となっている。しかし一方で、視覚や聴覚等の障害等により、必要な情報を円滑に取得することや意思疎通を図ることに支障を来している人が存在し、生活において不利益が生じたり、事故や災害の場面で生命に危険が及んだりする場合もあり、そうした障害者等への支援が急務となっている。  障害者等が自ら情報を取捨選択し、自らの意思で行動できることは、障害者等の安全で安心な暮らしの実現とともに、自立や社会参画に向けて不可欠な要素であり、障害者等に対して、生活に必要な情報の取得や意思疎通のための多様な手段を確保することが、ユニバーサル社会づくりにおいて非常に重要な視点である。  障害者等への支援は、全ての人への支援につながる。ここに、障害者等の情報の取得及び利用並びに意思疎通の手段の確保に関する取組を促進するため、その基本理念を定め、県、市町及び事業者の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、県の施策の基本となる事項を定めることにより、県民誰もが、安心して暮らし、自己決定による能動的な社会参画ができる環境を整え、ユニバーサル社会づくりの推進に寄与することを目的として、この条例を制定する。  (定義) 第1条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者等 障害者、高齢者その他の日常生活又は社会生活において円滑な情報の取得及び利用並びに意思疎通(以下「意思疎通等」という。)に相当の制限を受ける状態にある者をいう。 (2) 意思疎通等の手段 音声言語及び文字、点字、手話その他の形態の非音声言語、筆談、要約筆記、代筆、代読、音声訳、絵図、重度障害者用意思伝達装置その他の意思疎通等を図る際に活用される手段をいう。  (基本理念) 第2条 障害者等に対しては、生活における多様な意思疎通等の手段が確保され、自らが望む意思疎通等の手段を選択する機会が確保されなければならない。 2 生活における多様な意思疎通等の手段の確保(以下「意思疎通等の手段の確保」という。)は、障害者等だけでなく、全ての人の問題であることを認識し、相互の個性と人格の違いを理解し、互いに尊重することを基本として行わなければならない。  (県の責務) 第3条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する総合的な施策を策定し、及び実施するものとする。  (市町の責務) 第4条 市町は、基本理念及び第7条第1項に規定する計画を基本とし、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する施策を策定し、及び実施するものとする。  (事業者の責務) 第5条 事業者(社会福祉施設、医療施設、官公庁施設、教育文化施設、公共の交通機関の施設その他の公益的施設を設置して行う事業その他の事業を営む者をいう。以下同じ。)は、基本理念に対する理解を深め、自らの事業活動において、障害者等の意思疎通等の手段の確保に努めるものとする。 2 電気通信及び放送その他の情報の提供に係る役務の提供並びに情報通信機器の製造等を行う事業者は、当該役務の提供又は当該機器の製造等に当たっては、障害者等の利用の便宜を図るよう努めるものとする。  (県民の協力) 第6条 県民は、基本理念に対する理解を深め、県及び市町が実施する障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する施策に協力するものとする。  (計画の策定) 第7条 知事は、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する施策を推進するため、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する計画(以下「計画」という。)を定めるものとする。 2 計画に定める事項は、次のとおりとする。 (1) 障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する取組方針及び目標 (2) 前号に掲げるもののほか、次条から第13条までに定める施策に関する事項その他の障害者等の意思疎通等の手段の確保に関して必要な事項 3 計画は、ユニバーサル社会づくりの推進に関する条例(平成30年兵庫県条例第27号)第12条第1項に規定する総合指針(次項において「総合指針」という。)その他の条例の規定による方針であって、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。 4 計画は、総合指針と一体のものとして作成することができる。 5 知事は、計画を定め、又はこれを変更しようとするとき(軽微な変更をしようとするときを除く。)は、障害者等の意見を聴くものとする。 6 知事は、計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なくこれを公表するものとする。  (県の情報発信における配慮) 第8条 県は、情報の発信をする場合においては、障害者等が円滑に当該情報を取得できるようにしなければならない。 2 議会及び知事その他の執行機関は、前項の規定に基づき、次に掲げる措置が講ぜられるよう配慮するものとする。 (1) 文書、出版物その他の文字による情報にあっては、文字の大きさ、色彩等についての配慮、点字表記、朗読、平易な表現その他の障害者等が円滑に当該情報を取得するための措置 (2) テレビジョン放送、講演会その他の映像及び音声による情報にあっては、手話通訳、字幕その他の障害者等が円滑に当該情報を取得するための措置  (災害その他非常の事態における情報伝達) 第9条 県は、災害その他非常の事態の場合においては、障害者等に対して必要な情報を的確に伝達するため、市町その他関係機関と連携し、障害者等の家族及び支援者の協力を得つつ、障害者等に配慮した多様な手段による情報の発信を行うものとする。  (情報通信技術の活用) 第10条 県は、通信端末機器の配備その他の環境整備、障害者等の情報活用能力を向上するための支援その他の情報通信技術を活用した障害者等の意思疎通等を支援するための施策を講ずるものとする。  (人材養成) 第11条 県は、障害者等の意思疎通等を支援するため、手話通訳、点訳等を行う人材の養成を行うものとする。  (啓発及び学習の機会の提供) 第12条 県は、基本理念に対する県民の理解を深めるため、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する啓発を行うものとする。 2 県は、障害者等並びにその家族及び支援者その他の県民に対して、手話、点字等を学習する機会の提供及びその学習のために必要な環境の整備を行うものとする。  (団体への支援) 第13条 県は、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する施策を推進するため、障害者等を支援する団体に対し、情報の提供その他の必要な支援を講ずるものとする。  (行財政上の措置) 第14条 県は、障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する施策を推進するため、必要な行財政上の措置を講ずるものとする。  (施策の実施状況の公表) 第15条 知事は、毎年度、計画に基づく障害者等の意思疎通等の手段の確保に関する施策の実施状況をとりまとめて公表するものとする。    附 則  この条例は、平成30年4月1日から施行する。