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更新日:2025年2月5日

委員長報告

 ただいま議題となりました議案、認第1号ないし認第22号、すなわち令和5年度一般会計、特別会計及び公営企業会計の決算認定の件につきまして、決算特別委員会における審査の経過及び結果をご報告申し上げます。
 不信任決議による知事の失職を受け、県政の先行きが不透明な中ではありますが、決算審査は、予算の適正かつ効率的な執行を確認し、その結果を今後の予算編成と県政運営へと反映させる重要な役割があるとの認識のもと、当委員会は、去る9月30日の設置以来、11回にわたり、鋭意審査を行ってまいりました。
 審査におきましては、議会が果たすべき監視・評価機能の重要性を十分に踏まえつつ、令和5年度予算が、その趣旨・目的に沿って適切に正しく執行されたのか熱心な議論が展開されました。
 令和5年度予算は、当初、①新しい時代の力を育む、②人の流れを生み出す、③一人ひとりに寄り添う、という3つの視点で編成され、その後、数次にわたる補正予算によって、物価高騰等に直面する生活者・事業者に対する支援のほか、令和5年台風第7号に伴う災害への対応、児童の安全対策強化や社会基盤の充実・強化による県民生活の安全・安心の確保に向けた取組などが実施されました。
 現下の本県経済は、緩やかな回復基調が見られるものの、円安や原油・原材料価格高騰の影響を受けた物価上昇によって、県民生活や事業者の経済活動が厳しい状況にあります。当委員会では、予算執行の審査とともに、本県を取り巻く現下の状況において、本県が今後どのような施策に取り組んでいくべきかについても議論がなされました。
 審査に際して、委員各位から述べられた意見等を2つの区分に分け、まず、『財政状況』について、続いて、「持続的に発展する兵庫経済の構築」、「魅力あふれる地域・交流圏の形成」、「希望と温かさに満ちた社会づくり」、「安全安心基盤の強化」、「県政の推進基盤の構築」の5本の柱からなる『令和5年度県政の重点施策』について、それぞれご報告申し上げます。


 はじめに、「財政状況」についてであります。
 まず、令和5年度一般会計については、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、対策関連経費等が減ったことにより、歳入・歳出ともに前年度比で約2,000億円減少し、歳入2兆4,077億円、歳出2兆3,836億円となり、過去5番目の規模でありました。
 社会活動の正常化に加え、円安やインバウンド需要の増加に伴う企業業績の回復により、県税収入等が過去最高となったことに加え、効率的な事務執行等に伴う歳出不用等により、実質収支は141億1,000万円、実質単年度収支は90億900万円、後年度の精算分を除いても、実質収支は35 億200 万円の黒字が確保されました。
 また、令和5年度末の財政基金残高は、震災以降約30年ぶりに100億円を超え、127億円となりました。
 一方で、本県は、依然として残る震災関連県債の償還、ひょうご農林機構の分収造林事業や企業庁の地域整備事業会計における多額の債務への対応など、厳しい財政状況が続いています。その結果、単年度の実質公債費比率は17.5パーセントで、本年3月に見直しが行われた県政改革方針の財政フレームで見込まれた単年度の比率17.7パーセントを0.2ポイント下回ったものの、前年度と比較すると1.6 ポイント悪化し、健全化判断比率である3ヵ年平均の実質公債費比率は、16.3パーセントと、前年度から0.8ポイント悪化しています。
 また、将来負担比率については、321.5パーセントで県政改革方針の財政フレームの見込み323.2パーセントを1.7ポイント下回り、前年度の330.8パーセントと比較すると、9.3ポイント改善していますが、依然として、全国ワースト1位の高い水準にあります。
 県政改革方針の財政運営指標では、令和7年度の実質公債費比率が県債の発行に総務大臣の許可が必要となる18パーセントを超過し、令和10年度までの収支不足総見込額が215億円となるなど、本県の財政は、今後も厳しい状況が続くことが見込まれます。このような状況を踏まえ、危機感を持った、より堅実な財政運営に努めることが求められました。


 このように財政運営指標が悪化している一方で、財政基金残高が127億円となったことについて、依然厳しい財政状況の中、財政基金への積み増しを優先することは、財政が改善しているかのようなイメージを強調することにならないか、あるいは、歳出改革は必要だが、県民生活、社会経済活動を支援する財政運営にもっと振り分けるべきではないか、などの意見が述べられました。
 また、県債管理基金について、基金集約の解消や不適切な基金運用の是正に伴い減少した基金残高復元の必要性や、金融市場の動向を踏まえた適切な県債の発行、震災関連県債残高の負担軽減に向けた国への要望などが求められました。
 その他、ひょうご農林機構の特定調停による債務整理の実施と債務超過状態の継続が機構の経営や県財政に与える影響などについて意見が述べられたところであります。


 一方、自主財源の確保に当たっては、県税徴収率が全国平均を上回り、99.2%と過去最高を更新していますが、厳しい財政状況が続く中、収入未済額の一層の縮減など、引き続き税収確保への取組が求められました。
 また、県税納付等に係るデジタル化の推進、個人版ふるさと納税及び企業版ふるさと納税、企業広告やネーミングライツの活用などファンドレイジングの推進、不正軽油対策などの取組が求められました。


 このほか、収入証紙の廃止、病院事業会計の健全化、中小企業高度化資金の債権回収と整理、内部管理制度の実効性を高める取組、公社等のあり方の見直し、県庁舎のあり方と財政指標への影響、ひょうご事業改善レビューの今後の進め方などについて多岐にわたる意見が述べられたところであります。


 公営企業会計については、病院事業において、新型コロナ5類移行に伴う病床確保料の大幅な減少、患者の受療行動の変化、さらに物価高騰や賃金上昇などの影響により、純損益は94億円の赤字となりました。その結果、令和5年度末の累積欠損金は496億円、204億円の債務超過と5年連続の債務超過となったことから、各病院の経営責任の明確化と効果的、効率的な運営が求められました。
 また、企業庁の収益的収支を有する5つの事業会計及び流域下水道事業会計については、地域創生整備事業会計が、ひょうご小野産業団地分譲終了後の周辺整備工事の実施等により、1億円の赤字となりましたが、その他の事業会計は黒字が確保されました。なお、地域整備事業会計の抜本的見直しについては、県全体としての多様な視点から地域整備事業の意義や必要性を検証することが重要との意見が述べられたところです。


 続いて、「令和5年度県政の重点施策」についてであります。一つ目の柱「持続的に発展する兵庫経済の構築」については、今後の経済
成長を牽引する起業家のスタートアップ支援、商店街の活性化、中小企業の事業承継支援や融資制度の充実、県内就職を促進する奨学金返済支援制度の充実、外国人労働者の受入拡大、小規模農家や畜産農家に対する支援、脱炭素取組の推進、水素社会の実現に向けた機運の醸成、神戸空港の国際化の推進、などが求められました。


 二つ目の柱「魅力あふれる地域・交流圏の形成」については、インバウンド誘客の促進と観光地域を支える人材の育成・確保、ひょうごフィールドパビリオンの展開とプログラムの磨き上げ、社会ニーズに応じた県営住宅の活用、道路の整備促進と適切な維持管理、市町と連携した持続可能な多自然地域づくり、元町周辺の再整備とにぎわいづくり、総合的なスポーツ行政の推進とスポーツ推進計画の見直し、などが求められました。


 三つ目の柱「希望と温かさに満ちた社会づくり」については、少子化対策の重要なカギとなる不妊治療への支援、がん検診受診率を向上させる効果的な取組の推進、障害者の社会参加に向けた農福連携の充実、里親育成とケアリーバーへの支援、ユニバーサルツーリズムの推進、防災教育の充実、教育DXの推進、などが求められました。


 四つ目の柱「安全安心基盤の強化」については、介護人材の確保対策や介護ロボット導入等への支援、ひきこもりや不登校児童生徒への支援、医師・看護師の確保対策と病院DXの推進、インターネット上の人権侵害への対応、増大する特殊詐欺の被害防止対策、犯罪被害者への支援体制の構築、災害時の情報収集・伝達手段を確保するインフラの整備、土砂災害対策の充実強化、災害に強い森づくりの推進、持続可能な水道事業の運営、などが求められました。


 五つ目の柱「県政の推進基盤の構築」については、県のガバナンス体制の強化と内部統制のあり方の見直し、モデルオフィス検証結果を踏まえた職員の働き方と県庁舎整備方針の早急な検討、県職員の公益通報制度の体制整備、国の事務・権限の委譲による関西広域連合の役割強化、兵庫県のブランドを打ち出す広報活動の推進、などが求められました。


 このほか、県立大学無償化の見直し、分収造林・育林契約解約後の森林管理、豊かで美しい海の再生、障がい者アートの推進、市町との技術人材の人事交流、区域区分の廃止、老朽化マンションの建替支援、震災30 年事業と防災庁誘致に向けた取組、などについて意見が述べられたところであります。


 以上、冒頭申し上げた二つの観点から、特に議論があった事項についてご報告を申し上げました。
 県当局におかれましては、議会の意見を十分に尊重し、地域が抱える様々な課題解決に向け、県政改革方針のもと、将来世代につけを残すことがないよう強い危機感を持ち、着実な改革の推進によって、時代の変化や県民の要請に的確に対応できる持続可能な行財政基盤を確立するとともに、県民の活動を支え、県民とともに歩む県政を創りあげる取組が進められるよう強く望むものであります。


 最後に、表決の結果について申し上げます。
 認第1号、認第5号、認第7号、認第10号、認第11号、認第14号ないし認第17号、認第19号、認第21号、認第22号、以上12件につきましては、賛成多数をもって、また、認第2号ないし認第4号、認第6号、認第8号、認第9号、認第12号、認第13号、認第18号、認第20号、以上10件につきましては、全会一致をもって、いずれも原案のとおり認定すべきものと決した次第であります。


 議員各位におかれましては、何とぞ当委員会の決定どおりご賛同を賜りますようお願い申し上げまして、決算特別委員会の審査報告を終わります。

お問い合わせ

部署名:兵庫県議会事務局 議事課 委員会・記録班

電話:078-362-3714

FAX:078-362-9031

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