ここから本文です。
ようこそ知事室へ
第370回兵庫県議会の開会に当たり、県政の推進に日頃からご指導いただいている議員の皆様に敬意と感謝を申し上げます。
去る1月18日、竹内英明元県議会議員が逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。竹内元県議は、2007年の初当選以来、5期17年余の長きにわたり、行財政改革をはじめ幅広い分野にわたる高いご見識のもと、情熱をもって兵庫の発展にご尽力いただきました。生前のご功績をしのび、衷心より感謝の誠をささげますとともに、心からのご冥福をお祈りいたします。
次に、提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
<阪神・淡路大震災30年>
阪神・淡路大震災から30年を迎えた1月17日、天皇皇后両陛下御臨席のもと、県公館とHAT神戸において追悼式典を執り行いました。尊い犠牲となられた方々へ哀悼の誠をささげるとともに、復旧復興に尽力してこられた方々、国内外から寄せられた温かいご支援に対し、敬意と感謝の意を表しました。30年前、多くのかけがえのない命が一瞬にして奪われ、まちが無残に姿を変えたあの時、人々は何を感じ、ふるさとの行く末にどんな思いを馳せたのでしょうか。時の経過とともに災害の記憶の継承が難しくなる中、私たちは今改めて、当時の人々の思いや願いを心に刻み直し、歩みを進めなければなりません。
人命救助等にあたった消防隊員は、震災直後、次のように述べています。
「いったい今までの震災対策はなんであったのだろうか、というような無力感がこみ上げてきた。」「この無残な体験を決して無駄にしてはならない。日本はもとより世界へと発信できる震災対策を築き上げなければならない。」
想像をはるかに超えた災害に直面しながらも、決して心が折れることはありませんでした。そこに生まれたのは、同じ悲しみを繰り返してはならないとの固い決意です。そして私たちは、その決意を堅持し、震災の経験と教訓を活かして、防災力の強化に力を注いできました。来るべき災害に立ち向かい、安全安心な社会を創り上げる挑戦は、これからも揺るぎない方針として貫いてまいります。
震災が私たちに気づかせたこと、それは災害への備えの重要性だけではありません。阪神・淡路大震災では、救助された人の約8割は地域の方々の助け合いによるものでした。避難所や身近な地域で、食料・水・毛布などを融通し合い、高齢者や障害を持つ人々の見守りや支援が広がりました。全国からボランティアが駆け付け、世界中から手を差し伸べられたことも忘れてはなりません。あの時、輝きを持って浮かび上がったのは、人と人との強い絆です。
今、孤独・孤立が深刻な課題となり、不安や生きづらさを抱える人も少なくありません。絆を活かし、誰も取り残さない社会をつくる。これも震災を経験した兵庫だからこそ、先導して取り組むべきことではないでしょうか。
そして、被災された方々が強く願ったこと。それは、私たちのふるさとが震災を乗り越え、夢や希望が広がる地域になることです。当時、被災地の児童が詠んだ詩の中にも、こんな一節があります。
「くやんでいても、明日は見えてこない
はばたいてみないと幸せはやってこない
友よいっしょに 夢の続きを描いていこう
希望よ広がれ 夢よふくらめ 朗らかな街に栄えあれ」
絶望の中にあっても顔を上げ、未来に向かおうとする力強さに胸を打たれます。創造的復興の理念も、多くの人々のこうした思いが響き合って生まれたのではないでしょうか。大災害から立ち上がり、より良い地域・社会を創り上げる取組のバトンは、今私たちに引き継がれています。激しい社会の変化の中にあっても活力が持続し、一人ひとりが幸せを実感できる未来を切り拓いていかなければなりません。とりわけ、今求められるのは、次の時代を担う若い世代が、自らの可能性を広げ、夢に向かって歩める社会を創っていくことです。震災30年の節目を迎えた今年、改めて私たちが手にしているバトンの重みに身を引き締め、県民の皆様とともに新しい兵庫づくりを進めていく決意です。
≪新年度の主な施策≫
以上のことを踏まえ、新年度の当初予算は、「誰も取り残さない安全安心な兵庫」「若者が輝く兵庫」「活力がわきあがる兵庫」の3つの柱と、それを支える「県政運営基盤の構築」を重点に編成しました。
以下、主な施策を説明します。
【誰も取り残さない安全安心な兵庫】
第一に、誰も取り残さない安全安心な兵庫づくりです。自然災害の脅威が増しています。特殊詐欺被害など暮らしの安全も脅かされています。団塊の世代が全員後期高齢者になり医療・介護の体制づくりが一層求められるとともに、孤独・孤立の広がりも大きな課題です。誰もが住み慣れた地域で、安全安心に包まれて暮らすことができるよう、取組を強化します。
<防災・減災対策の強化>
その一は、防災・減災対策の強化です。
(震災の経験と教訓を活かす取組)
「うすれない記憶はない。つなぐべき決意がある。」をキャッチフレーズに展開している震災30年事業の一環として、9月に「創造的復興サミット」を開催します。被災地の知事や海外の自治体・関係機関などが一堂に会し、共同宣言をとりまとめて創造的復興の理念を国内外に発信します。また、国で検討が進んでいる防災庁の設置にあたっては、防災機能をバックアップできる双眼構造の構築が求められます。本県は、防災分野の人材育成や研究で全国を先導し、関西広域連合ではカウンターパート方式などの調整機能を担ってきた実績を有することから、本県への拠点設置を提案していきます。
(能登半島地震等を踏まえた対策強化)
昨年の能登半島地震で浮き彫りとなったのは、孤立集落対策や避難所運営などの課題です。このため、県庁舎や拠点となる医療機関への低軌道衛星通信(スターリンク)の導入や、トイレカーの整備、備蓄物資の充実などを進めます。また、能登半島地震では犠牲となられた方の多くは、家屋倒壊が原因でした。本県の高齢者世帯の住宅の耐震化率は約8割と低迷している状況を踏まえ、耐震シェルター工事等への支援を拡充します。
(県土の強靱化)
昨年11月、福良港の湾口防波堤と防潮堤が完成しました。激甚化・頻発化する自然災害に備え、引き続き、河川改修、高潮対策など、県土の強靱化を進めます。インフラ老朽化への対応も着実に推進します。
<地域の安全対策の推進>
その二は、地域の安全対策の推進です。
(特殊詐欺等対策の強化)
オレオレ詐欺の増加など、昨年の特殊詐欺の被害状況は認知件数・被害額とも過去最悪を更新しました。SNS型投資・ロマンス詐欺の被害も急増しています。このため、自動通話録音装置の普及に加え、特殊詐欺犯とのやりとりを疑似体験する体験型講習会を新たに開催するなど、対策を強化します。
<医療・介護体制の充実>
その三は、医療・介護体制の充実です。
(感染症対策の強化)
新型コロナウイルス感染症に対する県の取組を検証する中で、県が独自に専門家の助言を得る体制の必要性が指摘されました。感染症専門家の知見に基づき、平時には情報発信や人材育成機能、有事には対策の司令塔機能を担う「兵庫県感染症対策センター(仮称)」を神戸大学と連携して設置します。
(持続可能な医療提供体制の構築)
高齢化等で高まる救急需要への対応が課題となっています。限りある医療資源を有効に使うためにも、救急医療相談や医療機関の案内を行う救急安心センター事業「#7119」を、市町と連携して全県展開します。医師の働き方改革により看護師へのタスクシフトが進む中、重要性が増しているのが看護補助者の役割です。ハローワークとの連携に加えて、新たに県公式の求人求職サイト「マッチボックス」も活用し、看護補助者の確保・定着に取り組みます。
(介護基盤の充実)
住み慣れた自宅で安心して暮らし続けるためには、在宅介護サービスを提供する基盤の強化が欠かせません。支援対象の事業者を拡大するなど在宅介護サービスへの事業者参入の促進や、訪問介護員の確保・育成支援を強化します。また、介護現場への介護ロボット等の導入支援も計画的に進めます。
(PFASの実態把握)
健康への影響が懸念されるPFASについては、公共用水域でのモニタリングを強化するとともに、低減・削減に向けた調査研究を進めます。
<孤独・孤立の防止>
その四は、孤独・孤立の防止です。
(不登校対策等の充実)
不登校児童生徒支援員の配置に対し、「不登校気味だった子どもが学校へ行けるようになった」「学級担任の負担軽減につながっている」との声をいただいています。支援員を全校配置した中学校では、不登校生徒数は前年比横ばいで推移しているものの、4校に1人の配置割合である小学校では依然として増加傾向にあることから、全校配置に向けて段階的に支援を拡充します。また、学校に通えない不登校児童生徒の教育機会を確保するため、市町と連携して、フリースクール等の民間施設に通う児童生徒の家庭の経済的負担を軽減します。
(ひきこもり対策の強化)
コロナ禍の影響もあり、ひきこもり状態にある方が増加しています。身近な相談窓口となる市町のひきこもり支援拠点の整備を促進するとともに、保健師等を圏域毎に配置して後方支援力を高めます。
(ケアリーバーの支援)
社会的養護経験者であるケアリーバーにとって、進路選択の視野を広げられる機会が必要です。特に大学進学は、身近にロールモデルがおらず、早い段階で大学進学を選択肢として考えられないとの声もあることから、予備校等と連携した進学支援セミナーの開催などを実施します。
(SNSによる誹謗中傷等の防止)
SNSによる誹謗中傷やプライバシーの侵害、差別的言動、真偽不明の情報の拡散などが深刻化しています。特定の個人や自分と考え方の違う人たちのことを貶め、傷つける行為は、誰であっても決して許されるものではありません。誹謗中傷等の防止を図る啓発キャンペーンを展開するとともに、弁護士相談の開設日を拡充します。また、インターネット上の人権侵害の防止に向けた条例制定の検討を進めます。
(多文化共生の推進)
県内に住む外国人が増加し、出身国の多様化や居住地域の分散化も進んでいます。こうした外国人住民が安心して生活できる環境を整えていくため、新たに実務者会議を立ち上げ、福祉・住宅・教育・人権など生活面での課題への対応を検討し、施策につなげていきます。
【若者が輝く兵庫】
第二に、若者が輝く兵庫の実現です。
人口減少が進む中でも、兵庫が持続的に発展していくためには、次の時代を担う若者が自らの可能性を広げ、いきいきと自分の人生を歩める環境づくりが欠かせません。教育、就職、出産・子育て、住まいまでライフステージに応じて切れ目のない施策を展開する「若者・Z世代応援パッケージ」をさらに充実させます。
<「学びやすい兵庫」の実現>
その一は、「学びやすい兵庫」の実現です。
(教育費の負担軽減)
県立大学の授業料等無償化に対して、「経済的問題で諦めかけていたけれど、頑張る目標ができた」との声が高校生から寄せられています。国の高等教育無償化の議論の先鞭となるよう、定期的に事業を検証する仕組みや、安定的に財源を確保するための基金なども設けつつ、令和8年度の制度完成をめざします。県外の大学院生の入学金についても、国立大学並みに引き下げます。今年度拡充した奨学金返済支援制度については、12月末時点で申請者が前年と比較し約3割増加しています。中小企業と連携し、引き続き積極的に推進します。物価高騰等の影響により私立高校等の平均授業料が年々増加していることを踏まえ、授業料軽減補助を拡充します。また、建学の精神に基づき個性豊かな教育が実践されている県内の私立高校が今後も選ばれ続けるよう、検討会を設置し、魅力向上策を検討します。
(教育環境の充実)
昨年12月、芝生化された社高校と星陵高校のグラウンドで、生徒の喜びの声を聞きました。引き続き、グラウンドの芝生化や、生徒の意見を踏まえた部活動用具等の更新を進めるとともに、選択教室等の空調整備や老朽化施設の緊急修繕などを加速します。新たに全ての県立学校へ生徒個人用ロッカーを設置するなど、教育用備品の整備も集中的に行います。
(世界や地域を知る機会の充実)
「日本では味わえない得がたい経験となった」。今年度スタートした「『海外武者修行』プロジェクト」に参加した高校生が熱く語ってくれました。世界で自分を試したいという高校生の思いを叶えるため、年間100人規模の支援を目指し、来年度は支援人数を20名程度に倍増します。世界に触れるのと同時に、身近な地域をより深く知ることも重要です。高校生が地域活動への参画や地元企業での就業体験・事業提案等を行う「ふるさと共創プロジェクト」を開始します。シビックプライドを高め、地域創生を担う人材に育つことを期待しています。
<「子どもを産み育てやすい兵庫」の実現>
その二は、「子どもを産み育てやすい兵庫」の実現です。
(妊娠・出産支援の強化)
不妊治療の先進医療費助成に対して多くの方々から申請が寄せられる一方で、「県外の勤務先に近い医療機関に通いたい」「希望する治療が県外医療機関でしか受けられない」といった声も届いています。このため、助成対象を隣接府県のすべての医療機関での受診に拡充します。また、不妊治療と仕事の両立を図るため、企業への普及啓発や相談体制の構築、産後ケア事業の充実、地域での産科医療体制の検討など、安心して不妊治療・妊娠・出産ができる環境づくりを推進します。
(子育て支援の充実)
食物アレルギーを持つ子どもが増える中、保育所等に弁当を持参させざるを得ない保護者がたくさんおられます。保護者の負担を軽減する全員給食の実現に向け、調理員等を加配する民間保育所やこども園を支援します。また、要支援・要保護児童の保護者への相談対応等を充実するため、基幹となる保育所等に専門人材を配置し、他の保育所等への巡回も行いながら支援を広げます。
(学びの場・遊びの場の確保)
自宅外での勉強の場を求める高校生等が多いことを踏まえ、市町、大学、企業等へ自習室設置の協力を呼びかけ、県内で1,000席の確保を目指します。また、県立都市公園等において、ニーズの高いふわふわドームや日よけ、ベンチの整備などを進め、子どもたちや保護者がより楽しめる環境をつくります。
<「住みやすい兵庫」の実現>
その三は、「住みやすい兵庫」の実現です。
(子育て世帯への住宅支援)
兵庫への子育て世帯の転入超過が続く中、ファミリー向け住宅の確保や住環境の整備は大きな課題です。今年度から県営住宅のグレードアップ改修等を開始しましたが、新たに、県営住宅の敷地を活用して幼児向けの広場を整備し、地域に開放します。民間住宅への入居や子育て支援施設の開設を重点的に支援する「子育て住宅促進区域」についても、新たな区域指定を進めます。
<「働きやすい兵庫」の実現>
その四は、「働きやすい兵庫」の実現です。
(多様な人材の確保)
大学生の就職活動が早期化し、インターンシップの重要性が増す一方で、中小企業へのインターンシップ参加者は減少傾向にあります。このため、学生に響くプログラムの作成支援や、地場産業や観光などテーマ毎に複数企業を巡るインターンシップなど、新たな支援を実施します。外国人労働者の受け入れが進む中、安心して就職・定着ができるよう、企業の取組を見える化する外国人雇用企業認定制度を創設するとともに、外国人留学生と県内企業とのマッチング機会を拡充します。
【活力がわきあがる兵庫】
第三に、活力がわきあがる兵庫づくりです。
震災30年の節目の今年、大阪・関西万博が開催され、神戸空港での国際チャーター便の運航が始まります。兵庫にとって、まさに新たなステージの始まりとも言える年であり、兵庫の持つポテンシャルを最大限に活かし、活力を生み出していきます。
<大阪・関西万博における取組>
その一は、大阪・関西万博における取組です。
(ひょうごフィールドパビリオンの展開)
当初は「本当に手を挙げてくれる人がいるのか」と心配する向きもあったひょうごフィールドパビリオンですが、認定プログラムは260を数えるまでに充実しました。プレーヤー同士が主体的に連携する動きも生まれており、意欲の高まりと裾野の広がりを実感しています。万博期間中に多くの方々に足を運んでいただけるよう、万博会場でフィールドパビリオンフェスティバルを開催するなど、プロモーションを一層強化します。フィールドパビリオンは万博がゴールではなく、その後も地域活性化や観光交流人口拡大の原動力にしていくことが大切です。万博時の成果や課題を踏まえ、今後のあり方を検討します。
(万博会場「兵庫県ゾーン」での魅力発信等)
万博会場の関西パビリオン「兵庫県ゾーン」では、「兵庫は続ける、乗り越える」をテーマにした動画で、産業、文化、震災復興など兵庫の魅力や歩みを発信するとともに、県立美術館の「EXPO TERMINAL」では、フィールドパビリオンに関する体験型展示などを行います。このほか、子どもたちが主役の「こども万博」や、公民連携による万博会場への子ども招待、県内市町がそれぞれの魅力を発信する「EXPO41」など、オール兵庫で多様な事業を展開します。
(ひょうご楽市楽座の開催)
尼崎フェニックス事業用地には万博パーク&ライド駐車場が設置され、多数の利用者が見込まれることから、この機を活かして、五国の魅力を発信する「ひょうご楽市楽座」を実施します。万博期間中の週末、地域のグルメや県産品のマルシェ、県内各地のプレーヤーによるステージイベントなどを行います。また、隣接する尼崎フェニックスバーティポートでは、万博会場とを結ぶ空飛ぶクルマのデモフライトが予定されています。子どもたちなどに未来社会を体感してもらえるよう、フライト見学や技術者との座談会などを実施します。
<多様な産業の競争力強化>
その二は、多様な産業の競争力強化です。
(スタートアップの育成)
社会課題の解決や地域経済の活性化を図る上で、役割が増しているのがスタートアップです。起業意欲がある若者への支援を充実するとともに、既存のものづくり事業者と連携したスタートアップの創出、信用力を付与するための認定制度の創設などを行います。
(次世代産業の振興)
世界の航空旅客需要が増加する中、航空機業界の市場変化が加速しています。部品等のサプライヤーにもカーボンニュートラル等の取組が求められていることから、技術指導や販路拡大支援を行い、本県の強みである航空機産業の成長を支えます。
(地場産業の振興)
地場産業が持続的に発展していくためには、先を見据えた戦略的な事業展開が欠かせません。このため、産地の現状分析に基づく中期ビジョンの策定と、それに基づく重点取組への支援まで、パッケージで支援する枠組みを構築します。
<持続可能な農林水産業の実現>
その三は、持続可能な農林水産業の実現です。
(農村RMOの推進)
その地域ならではの農産品や食文化、景観など、「農」を核とした地域づくりが注目される中、高齢化・人口減少の進展により、営農活動や集落維持機能の低下が課題となっています。こうした課題に地域住民主体で取り組む「農村RMO」の創出・活動を支援し、持続的な農村地域づくりにつなげます。
(有機農業を含む環境創造型農業の拡大)
有機農業を含む環境創造型農業をさらに広げます。有機農産物等の出口対策として、量販店向けの出荷・流通モデルの構築や、学校給食への供給拡大を支援します。県立農業大学校に新設する有機農業を体系的に学ぶコースは、令和8年度の開講に向けて準備を進めます。また、万博のテーマウィーク「食と暮らしの未来」に合わせ、「環境創造型農業サミット」を新潟県、佐渡市、豊岡市と連携して開催します。コウノトリやトキと共生する農業の実践事例をもとに、環境創造型農業の意義を広く発信します。
(県産酒米及び日本酒の需要拡大)
伝統的酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録され、酒米山田錦の生産システムが日本農業遺産に認定されました。これを追い風に、県産の酒米や日本酒の需要拡大につなげていかなければなりません。酒のテロワールに理解のある欧州を中心とした輸出プロモーションや、国内需要を喚起するための試飲会の開催など、取組を充実します。
<循環型・自然共生社会の推進>
その四は、循環型・自然共生社会の推進です。
(水素利活用の促進)
昨年12月、「姫路港・東播磨港港湾脱炭素化推進計画」を策定しました。水素サプライチェーンの拠点形成に向けた取組として、将来的な水素需要量の調査を行うほか、水素社会推進構想の改定も進めます。あわせて、大規模水素ステーションの整備や、水素消費量の多い燃料電池トラックの導入に対する支援を開始します。
(脱炭素化の推進)
軽くて柔軟性があるペロブスカイト太陽電池は、次世代の太陽電池として期待されています。都心部での実証が進んでいますが、活用の幅を広げていくことが大切であり、営農型太陽光発電での実証を都道府県として初めて実施します。
(野生鳥獣対策)
ツキノワグマの出没数が高い状態で推移し、これまで出没がなかった地域でも目撃されています。市町と連携した出没防止対策や、捕獲用わなの導入支援、ICTによる監視など、管理を強化します。また、シカ、イノシシの生息域が都市部の市街地に拡大していることから、市街地でも実施可能なモニタリングや捕獲手法の開発に取り組みます。
<地域活力の創出>
その五は、地域活力の創出です。
(地域創生に向けた連携強化)
地域創生の好事例は県内各地で生まれてきており、この動きをさらに広げていくことが重要です。地域創生に関わるプレーヤーが交流するプラットフォームを構築し、事例の共有や新たなアイデアの創出を図り、公民連携により事業展開を支援します。
(空き家の再生)
空き家の増加が続く一方で、使えるにも関わらず流通していない空き家は約14万戸に上ります。こうした空き家の流通に向け、新たに家財道具や仏壇等の撤去費用を支援するとともに、空き家を地域資源として再生・活用するエリアマネジメントを担う人材の育成も開始します。
<社会基盤の充実・強化>
その六は、社会基盤の充実・強化です。
(高規格道路ネットワークの整備)
人々の交流や物流を支える高規格道路ネットワークは、兵庫の活力を生み出す大切な基盤です。東播磨道(北工区)は令和7年秋頃の開通、東播丹波連絡道路の西脇北バイパスは令和8年春の開通予定です。大阪湾岸道路西伸部、名神湾岸連絡線、神戸西バイパス、北近畿豊岡自動車道、山陰近畿自動車道など各路線の早期整備を推進します。播磨臨海地域道路は、引き続き国・沿線市町と連携し、都市計画・環境影響評価手続きを進めていきます。
(神戸空港の国際化)
神戸空港では4月から週40往復の国際チャーター便が運航されます。アジアの主要都市と神戸が結ばれ、兵庫経済が飛躍する大きなチャンスです。インバウンド誘客はもとより、ビジネスや修学旅行などアウトバウンド需要の創出にも力を注ぎ、定期便の就航につなげます。
<スポーツ・芸術文化の振興>
その七は、スポーツ・芸術文化の振興です。
(スポーツの振興)
スポーツの力は、人々に感動を与えるだけではありません。地域資源を掛け合わせることで、まちづくりや地域活性化にも大きく寄与します。このため、スポーツ団体や民間企業、行政などが一体となってスポーツを通じた地域振興に取り組むスポーツコミッションの創設に向けた検討を開始します。また、「ワールドマスターズゲームズ2027関西」の開催準備も本格化させます。
(芸術文化の振興)
県内の美術館・博物館を無料開放するプレミアム芸術デーは、参加施設数・観覧者数ともに伸びており、引き続き、子育て中の方や障害のある方に配慮した取組を行いながら実施します。障害者の芸術作品や音楽活動等の発表機会の充実も進めます。
【県政運営基盤の構築】
第四に、県政運営基盤の構築です。
<改革の着実な実行>
その一は、改革の着実な実行です。
県政改革については、今年度、県議会の調査特別委員会において精力的にご審議の上、報告書を取りまとめていただきました。これを踏まえながら、改革を実行していきます。
(県政改革の推進)
地域整備事業会計及び分収造林事業は、当面の債務の対応等に一定の道筋をつけ、将来的な事業等の収束に向けて取組を進めます。具体的には、地域整備事業会計は、民間活力の導入も視野に入れた保有資産の整理や播磨科学公園都市のあり方について、今後も関係者と丁寧に議論を行いながら改革を進めます。また、分収造林事業は、収益の期待できない分収林を含む民有人工林について、県が主体的に関与し市町と連携しながら、公益的機能が高く管理コストが低い針広混交林へ誘導するなど、県民全体で支える新たな森林管理スキームの構築を進めます。県庁舎再整備については、防災機能や働き方改革を志向した機能的でコンパクトな新庁舎整備の方針を決定しました。新庁舎整備まで当面の間、本庁舎機能は分散型配置となりますが、ICTを活用した業務改革や柔軟で多様な働き方を進めるとともに、出勤を希望する職員全員が勤務可能なスペースを確保し、大規模災害時等においても全庁を挙げた災害対応ができる体制を構築します。公社等は、社会経済情勢の変化や県民ニーズ、民間活力の積極的活用や民間との役割分担を踏まえ、引き続き見直しを進めます。若者・Z世代応援パッケージについても、毎年度、点検・評価を行い、各事業のブラッシュアップを図ります。
(財政フレーム)
財政フレームは、地域整備事業会計等の債務処理の影響を反映した中でも、税収増や経済成長率の上昇等により、令和10年度までの収支不足の総額は215億円から160億円に改善する見込みです。しかし、依然として収支不足は生じており、歳入歳出両面における改革を進め、収支均衡をめざします。
<風通しのよい職場づくり>
その二は、風通しのよい職場づくりです。
県職員等がより公益通報をしやすい体制を構築するため、新たに県外部の公益通報窓口を12月に設置しました。あわせて物品受領ルールを明確化すべく、財務規則の改正とガイドラインの策定を行いました。さらに、幹部職員を対象としたハラスメント防止研修を実施し、心理的安全性が保たれた風通しのよい組織を目指します。
≪新年度予算の概要≫
これより令和7年度予算の概要を説明します。
歳出では、融資目標額の見直しにより、中小企業制度資金貸付金が減少する一方、社会保障関係費や給与改定による人件費の増が見込まれます。また、分収造林事業や地域整備事業の債務整理にあたり、一時的に活用した県債管理基金の積み戻しや損失補償の実行にかかる経費を計上することから、前年度予算を上回る見込みです。歳入では、勤労所得の増加や堅調な企業業績により個人関係税や法人関係税が増加するなど、県税収入全体は前年度を上回る見込みであり、地方交付税等は減少するものの、一般財源総額では前年度当初予算を上回る見込みです。この結果、有利な財源や地方財政制度も活用し、新年度当初予算では、引き続き、収支均衡を図ることができました。
以上により編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 2兆3,581億5,700万円
特別会計 1兆7,953億4,300万円余
公営企業会計 歳入 3,377億7,800万円余
同 歳出 3,614億9,700万円余 となります。
≪条例、その他案件≫
条例については、兵庫県立農業大学校の設置及び管理に関する条例の一部を改正する条例など22件、その他案件については、兵庫県地域創生戦略の策定など14件です。
≪結び≫
先の追悼式典では、「しあわせ運べるように」を歌う子どもたちの澄んだ歌声が、県公館に響き渡りました。震災の約1か月後、避難所になっていた小学校の校庭で、児童らが電子ピアノを取り囲むように集まり、作詞作曲をされた臼井真先生から初めて披露されたのがこの歌です。以後、県内の学校や追悼行事で歌われるようになり、今では全国、世界へと届けられています。
「傷ついた神戸を もとの姿にもどそう
やさしい春の光のような 未来を夢み」
この曲が私たちの胸を打つのは、ふるさとの愛おしさが心の奥底から呼び起こされ、前を向いて踏み出す勇気を温かく鼓舞してくれるからではないでしょうか。まさに新しい兵庫づくりに歩む私たちへの力強い応援歌だと感じます。ふるさとの誇りを胸に、すべての県民の皆様が希望をもっていきいきと暮らし、活躍できる。そんな「躍動する兵庫」の実現をめざし、一層力を尽くしてまいります。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
お問い合わせ