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ようこそ知事室へ
本日、第371回兵庫県議会の開会にあたり、県政の推進に日頃からご指導いただいている議員の皆様に敬意と感謝を申し上げます。提出議案の説明にあわせて、諸般の報告をいたします。
まずは、情報漏えい事案への対応や風通しのよい職場づくりについてです。
(県保有情報の漏えい事案への対応)
県保有情報の漏えいの指摘に係る調査に関し、2つの第三者調査委員会より報告を受けました。インターネットへの流出が疑われた事案については、漏えいさせた者は不明であるものの、現職公務員による可能性が高いと報告されました。また、前総務部長による県議会議員への漏えい疑いについては、事実であったと報告されました。県政に対する信頼を損なうものであり、保有文書を適正に管理すべき立場にある県として、県民の皆様、そして元県民局長とそのご家族、関係者の方々に深くお詫び申し上げます。報告書を受け、インターネットへの流出事案については、警察に告発状を提出するとともに、SNSを運営する事業者2社に投稿の削除申出を行いました。また、前総務部長に対しては、先月27日付で懲戒処分を行いました。私自身も、組織の長として県保有情報の管理責任を重く受け止め、給与の減額措置を行いたいと考えております。今後、このようなことが起こらないよう、情報管理に対する職員の意識の徹底や綱紀粛正を図り、県民の信頼回復に努めます。
(公益通報者保護制度の適正な運用)
先月22日、消費者庁から全地方公共団体に「公益通報者保護法に係る対応の徹底」について技術的助言が出されました。公益通報は、社会の透明性を高め、信頼の基盤を築く上で極めて重要な制度です。県として、引き続き、法の趣旨を踏まえた体制の整備など適正な運用を図り、職員が安心して通報できるよう環境を整えていきます。
(風通しの良い職場づくりのための県幹部職員研修)
全庁を挙げて風通しのよい職場づくりを推進するため、先月12日に知事・副知事を含む県幹部職員の研修を実施しました。研修を通じて、職場でのコミュニケーションの重要性を再認識するとともに、公益通報者保護制度や個人情報保護制度の理解が深まるなど、有意義な機会となりました。来年度以降も継続的に実施し、研修効果の定着を図っていきます。
次に、米国の相互関税措置適用を踏まえた対応についてです。
米国による関税の引上げ措置は、我が国を含め世界で衝撃をもって受け止められました。既に、鉄鋼・アルミニウム、自動車といった品目別の追加関税、そして、現在は一部停止となっているものの、貿易相手国との関係において課される相互関税措置が発動されています。政府間交渉が続いていますが、グローバル化の進展やサプライチェーンの広がり等を考慮すると、特に製造業に強みを持つ本県として、今後の影響を十分に注視しなければなりません。
5月8日には、関係機関・団体で構成する「米国の関税措置に係る兵庫県経済対策会議」を開催しました。会議では、現時点で県内企業に大きな影響は確認されないものの、好循環に向けて動き出した経済の減速や、消費・販売・資金繰り等に対する憂慮が示されました。
こうした意見を踏まえ、足元の課題への対応はもとより、中・長期的な産業競争力の強化も視野に入れた、本県独自の支援策をパッケージで実施するため、補正予算を編成することとしました。
その1は、影響を受ける事業者への資⾦繰りを始めとした支援です。
すでに、4月4日に中小企業向けの総合相談窓口を設置するとともに、既存の各種専門相談窓口においても事業者への相談にきめ細かく対応しています。また、県内中小企業の資金繰りを支援するため、県制度融資の「経営円滑化貸付」に新たに「米国関税措置対策枠」を設け、貸付要件を緩和しました。これらの取組に加え、必要な構造改善を促すため、金融機関等の伴走支援を条件とする資金に対し保証料の補助を行います。
さらに、中小企業の海外ビジネス展開に対する支援を拡充するほか、日本酒をはじめとした地場産品の需要喚起の取組や、農林水産物の米国以外への販路開拓に対する支援の強化なども行います。
その2は、産業競争力強化のための理工系⼈材等の育成です。
本県の産業競争力を支える若手人材を育成するため、公共職業能力開発施設や、県立農業大学校・森林大学校において、訓練や学びの高度化に向けた機器整備を行います。また、4月に視察した県立尼崎工業高校では、溶接や旋盤など実習に打ち込む生徒の姿に感銘を受けました。若き匠を育む環境の充実に向け、県立高校の工業等の専門学科で使用する先端教育用備品を整備します。
その3は、国の電気・ガス料金支援に呼応した光熱費価格高騰の影響緩和です。
国が緊急対策として実施する電気・ガス料金支援の対象とならないLPガス利用者や特別高圧電圧を受電する中小企業等に対し、負担軽減対策を行います。
その4は、物価高騰の影響緩和です。
コメの平均価格が前年同期比で2倍になるなど、長期化する物価高騰が家計を直撃しています。ひょうご家計応援キャンペーン「はばタンPay+」第4弾の一般枠を拡充し、追加販売を行って、県民の暮らしを下支えします。
補正予算では、あわせて高校無償化への対応を行います。
高校生等臨時支援金について、国の令和7年度予算の修正成立に伴い、いわゆる高校無償化に係る令和7年度の事実上の収入要件が撤廃されました。これを受け、本県における所要額を予算計上するものです。
続いて、主な施策の推進状況等についてご報告します。
その1は、安全安心な兵庫づくりです。
(防災庁創設にかかる国への要望)
国で検討が進んでいる防災庁の設置にあたっては、防災機能をバックアップできる双眼構造の構築が求められます。去る4月15日、防災庁の創設や、本県への防災庁拠点の設置について、県議会をはじめ、市長会・町村会・町議会議長会の皆様と共に、オール兵庫で内閣府に要望を行いました。引き続き、防災庁の設置に向けて国に協力していくとともに、県内市町と一体となって拠点設置に取り組みます。
(能登半島地震被災地への支援)
先月22日、能登半島地震被災地の復興状況を視察するとともに、石川県知事および珠洲市長との意見交換や、県から派遣している職員からの報告会を行いました。被災した橋梁や山地災害の復旧、復興公営住宅の整備など、改めて復興に向けた息の長い支援の必要性を実感しました。
また、石川県知事と珠洲市長に対しては、9月に開催する「創造的復興サミット」において、現在の復興状況やめざしている復興後の地域の姿を広く発信していただきたいと打診し、承諾を得ました。
(北但大震災復興100年)
北但大震災の発生から、5月23日で100年を迎えました。豊岡市街地や城崎温泉街に壊滅的な被害をもたらしましたが、先人たちのひたむきな努力によって復興を成し遂げました。私も参加した城崎での復興100年記念シンポジウムでは、幅広い分野で次の100年に向けたビジョンが発信されました。
(城崎温泉火災への対応)
連休中の先月5日、城崎温泉で火災が発生しました。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げるとともに、消火や宿泊客の迅速な避難等にご尽力された皆様に感謝を申し上げます。現地を視察し、地域の方々と意見交換をする中で、道路幅の拡張や役場・警察署等の鉄筋コンクリート化など、北但大震災の経験と教訓を踏まえた取組が、このたびの火災でも延焼の拡大防止に活かされたことを感じました。
県として、建物の解体や景観修復への助成、義援金募集への協力、城崎温泉は元気であることのPRなど、地元の要望を踏まえて必要な支援を行っていきます。
(SNS広告等を活用した誹謗中傷等防止啓発キャンペーン等の実施)
SNSによる誹謗中傷やプライバシーの侵害、差別的言動、真偽不明の情報の拡散などが深刻な社会問題となっていることを踏まえ、誹謗中傷等防止啓発キャンペーンを開始しました。第1弾として、ゴールデンウィーク中にSNS広告で啓発動画を発信したほか、県内の高校や大学、公共施設等への啓発ポスターの掲示を進めています。引き続き、SNSの利用時間が増加する夏休み、冬休みを中心に啓発活動を強化します。
また、インターネット上の人権侵害の防止に向けた条例については、学識者や弁護士からなる有識者会議の意見や4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法の運用状況も踏まえながら、制定に向けた検討を進めます。
(県立がんセンター建替整備)
5月14日に県立がんセンター建替整備の起工式を行いました。公立病院の経営状況は全国的に厳しい状況にあり、本県も例外ではありませんが、3月に策定した経営改善策を着実に実行しつつ、県民の命と健康を守るため、計画的な統合再編整備を行い、高度専門・特殊医療の充実等を図ります。
(終戦80年の戦没者追悼式等の開催)
終戦80年の節目にあたる今年は、8月に神戸で戦没者追悼式、10月に南あわじ市の若人の広場で終戦80年全国戦没学徒追悼式を開催します。戦争犠牲者に追悼の誠を捧げ、改めて恒久平和を祈念するとともに、戦争の悲惨な体験や平和への願いを若年世代へ継承します。
その2は、若者が輝く兵庫づくりです。
(若者・Z世代応援パッケージの着実な実行)
「若者・Z世代応援パッケージ」の取組は2年目に入りました。未来を担う若者が自らの可能性を広げ、個の力がみなぎる兵庫の実現に向け、施策の拡充を図っています。5月には庁内推進本部会議を開催し、教育、就職、出産・子育て、住まいまで、ライフステージに応じた切れ目のない施策を、全庁一丸となって取り組んでいくことを確認しました。
(高等教育の負担軽減)
県立大学の授業料等無償化について、今年度は学部2年生から大学院博士課程後期3年生まで対象を拡大しました。志願者数に占める県内高校出身者の割合は、過去5年で最も高くなるなど、兵庫の若者が将来に夢を描く一助になっていると考えています。安定的な財源確保のための基金を活用しながら、令和8年度の制度完成をめざします。
(県立高校・私立高校の魅力向上)
県立高校の教育環境の充実に向け、先に述べた工業科等での設備整備のほか、引き続き、生徒の意見を踏まえた部活動用具等の更新や、選択教室の空調整備、さらには全ての県立学校への生徒個人用ロッカーの設置等も集中的に進めます。
私立高校に関しては、取り巻く現状・課題を共有し、意見交換を行う場として、「私立高校の魅力向上にかかる検討会」を設置しました。国における高校無償化の動きも踏まえつつ、建学の精神に基づく特色ある教育を行う県内の私立高校が、今後も選ばれる学校であり続けるため、私学関係者とともに魅力向上策を検討しています。
(HYOGO高校生「海外武者修行」応援プロジェクトの実施)
高校生「海外武者修行」応援プロジェクトに対して、これまでに個人及び企業等から8千万円を超える寄附が寄せられています。若者が世界に視野を広げ、夢を追って欲しいとの、多くの方々の思いを感じます。今年度は、支援人数を昨年度の10人から20人程度に増やし、引き続き、社会貢献やビジネス、スポーツなど幅広い分野での海外留学を応援します。
(不妊症等に関する支援推進条例の制定)
安心して不妊治療等を受けられる環境づくりを推進するため、基本理念や関係者の役割などを定めた条例の今定例会での制定をめざします。不妊症等の支援に特化した条例は全国初であり、不妊治療支援のみならず、プレコンセプションケアや治療と仕事の両立支援の推進なども含め、先導的な取組を進めます。
(子育て世帯への住宅支援)
「子育て住宅促進区域」として、昨年の尼崎市に次いで、新たに川西市と猪名川町のニュータウンを指定しました。ゆとりある住宅の取得や子育て支援施設の開設を重点的に支援することにより、子育て世代の県内定着につなげていきます。
その3は、活力がわきあがる兵庫づくりです。
(2025年大阪・関西万博の取組)
大阪・関西万博が開幕し、約50日が経ちました。万博会場の「関西パビリオン 兵庫県ゾーン」にはこれまで10万人を超える方々が来場され、うち9割を超える皆様から「兵庫県に行ってみたい」との声をいただいています。先週はフィールドパビリオンプレーヤーが一堂に会するフェスティバルを開催し、兵庫ならではの多彩な展示やステージイベントを展開しました。
また、県立美術館ギャラリー「ひょうごEXPO TERMINAL」では、フィールドパビリオンの体験型展示を行い、「ひょうご楽市楽座」では毎週末、県内各地のプレーヤーによるステージ、ブース出展を行っています。
万博期間中、こうした取組を通じて兵庫の魅力を多くの皆様に体感していただき、県内各地への誘客につなげてまいります。
(神戸空港の国際線就航)
4月18日から神戸空港の国際線運航がスタートしました。ソウル、上海、南京、台北、台中とつながり、運航開始から1か月間で約5万人が利用、搭乗率は80%を超えるなど好調です。県への経済波及効果を生み出すためには、神戸空港を起点とした県全域への観光誘客が重要であり、温泉、グルメ、フィールドパビリオンなどの文化体験等を掛け合わせたツアーを造成し、現地でのプロモーションも強化していきます。
(WMG2027関西大会に向けた取組)
「ワールドマスターズゲームズ2027関西大会」に向け、5月16日から18日にかけて、「台北市・新北市大会」を視察しました。会場では、神戸空港国際線の利用促進も含め、関西大会のPRや観光プロモーションを実施しました。今後、大会準備の加速や、知名度向上、機運の醸成に一層取り組みます。
(淡路花博25周年記念花みどりフェアの開催)
3月20日から4月27日までの39日間、「淡路花みどりフェア2025」を開催しました。県内外から68万人もの方々が淡路島を訪れ、花と緑が楽しめるイベント等を体験いただきました。「人と自然の持続的な共生のあり方」がレガシーとして次の世代へ継承され、発展することを期待しています。
(ひょうごプレミアム芸術デー等の実施)
7月9日からの1週間、県内の美術館・博物館を無料開放する「ひょうごプレミアム芸術デー」を開催します。4年目を迎え、今年は参加施設数も114に拡大します。また、7月19日からは、芸術文化センターにおいて、佐渡裕芸術監督プロデュースによるオペラ「さまよえるオランダ人」を上演します。阪神・淡路大震災の心の復興のシンボルとして開館した同センターの20周年記念公演であり、一段と大きなスケールの演出で芸術文化のすばらしさを発信します。
(有機農業を含む環境創造型農業の取組拡大)
実践的なカリキュラムに沿って有機農業の知識と技術を体系的に学べる「有機農業アカデミー」の来年4月開講に向け、入学者の募集概要を発表するとともに、7月からは新設ほ場での体験研修を実施します。
また、学校給食への供給拡大など有機農産物等の出口対策を強化するほか、有機農業を含めた環境創造型農業の推進を下支えする条例の制定に向けて検討を進めていきます。
(環境創造型農業サミットの開催)
万博のテーマウィーク「食と暮らしの未来」に合わせ、6月7日に新潟県、佐渡市、豊岡市と連携して「環境創造型農業サミット」を開催します。「コウノトリ育む農法」および「朱鷺と暮らす郷づくりと生き物を育む農法」の取組の価値や効果を広く発信し、食や地域の未来について考える機会にします。
(燃料電池商用車の導入促進に関する重点地域への選定)
水素を燃料とするトラック・バス等の燃料電池商用車の導入拡大に向け、国は全国で5つの重点地域を選定し、このうち近畿重点地域の中核地方公共団体として本県が選ばれました。これにより、事業者が県内で水素ステーションを整備・運営する際に、国から集中的な支援を受けられることになります。事業者や市町等と連携し、水素ステーションや水素モビリティの導入加速に取り組みます。
最後に、県政運営基盤の構築です。
(新庁舎の整備・暫定的な本庁舎再編)
機能的でコンパクトな新庁舎整備に向け、県議会や「県庁舎のあり方等に関する検討会」の意見を踏まえながら検討を進めています。今後、秋頃を目途に、施設規模や敷地内のゾーニングなど、庁舎整備にかかる大きな方向性や考え方を定める基本構想をまとめる予定です。あわせて、新庁舎整備までの間に暫定的に行う、3号館などの県有施設や民間オフィスへの移転についても計画的に進めます。
(ファンドレイジングの展開)
自主財源の確保策として、ファンドレイジングに積極的に取り組んだ結果、昨年度の個人・企業からの寄附金額は前年度比で2倍を超え、過去最高の23億円に上りました。多くの方々の思いをしっかりと受け止めて事業の推進に活かすとともに、引き続き、共感を得られるプロジェクトの展開や魅力ある返礼品の充実等を通じて、さらなる寄附の獲得をめざします。
(令和6年度決算見込み)
令和6年度決算見込みについては、過日、出納を閉鎖し、現在、集計整理を進めています。企業業績の回復に伴う県税収入の増加などにより、昨年度に引き続き、精算分を除いた実質収支及び実質単年度収支とも、黒字を確保できる見込みです。
これより、提出しました議案について説明します。
予算案件は、さきほど主な事業を説明した「令和7年度兵庫県一般会計補正予算(第1号)」1件です。補正予算の規模は、一般会計で92億41百万円の増額です。
財源は、重点支援地方交付金をはじめとする国庫支出金等を活用します。
条例案件は、「不妊症等に関する支援推進条例」等4件、その他案件は、「兵庫県公立大学法人定款の一部変更」等8件です。
専決処分承認案件は、中央こども家庭センターに関する「和解及び損害賠償額の決定」1件です。
以上で、提出議案の説明を終わります。
議員の皆様におかれましては、よろしくご審議のうえ、適切なご議決をいただきますようお願いします。
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