ホーム > しごと・産業 > 労働・雇用・資格 > 労働委員会・労働情勢等 > 平成30年(不)第11号事件の命令概要

更新日:2020年6月5日

ここから本文です。

平成30年(不)第11号事件の命令概要

兵庫県労働委員会は、令和2年5月19日、標記事件に係る命令書の写しを当事者に交付しました。その概要は次のとおりです。

1 当事者及び申立要旨

  • (1) 申立人X組合
  • (2) 被申立人Y会社
  • (3) 申立要旨
    • ア 申立日
      平成30年12月21日
    • イ 請求する救済内容(労働組合法第7条第1・3号)
      不利益取扱いの撤回
      支配介入の禁止
      文書掲示・文書交付

2 命令要旨

〔主文〕

  • (1) 被申立人Y会社は、時間外労働について、申立人X組合組合員A2と被申立人Y会社の他の従業員であるCを差別して取り扱ってはならない。
  • (2) 被申立人Y会社は、平成28年10月支給分から本命令書交付の日までの間の時間外労働について、タイムカードの打刻時刻から算定した、CとA2の時間外労働時間数を合算して得た時間数の2分の1からA2の時間外労働時間数を差し引いて得た時間数に見合う時間外割増賃金(ただし、上記期間中に当月分の時間外割増賃金の額が固定残業代を超えない月がある場合は、その差額を合算したものを除く。)をA2に対して支払わなければならない。
  • (3) 被申立人Y会社は、本命令書写し交付の日から7日以内に、下記文言を記載した文書を申立人X組合に交付しなければならない。

令和 年 月 日

X組合

執行委員長 A1 様

Y会社

 代表取締役 B1

 

当社が貴組合の組合員A2に対し、時間外労働について他の従業員と差別して取り扱ったことは、兵庫県労働委員会において労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当すると認定されました。

今後、このような行為を繰り返さないことを誓約します。

〔事件概要〕

本件は、会社が兵庫県労委平成26年(不)第9号事件(以下「前事件」という。)に係る命令(以下「前命令」という。)の確定後も前命令主文第1項の履行を怠り、時間外労働に関してA2とCを差別して取り扱ったことが、A2に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するとして、救済申立てがなされた事案である。

〔判断要旨〕

  • (1) 前命令確定月以降の時間外労働の命令に係る差別的取扱い
    前命令確定月以降のCの時間外労働時間数は、自己申告によるのではなく、タイムカードの打刻時刻から算定するのが相当である。

会社は、前命令確定後にCを役付場長に異動させ、職制上、明確にCをA2の上司とすることによって、前命令の前提となる事情に変更があったこと、及びA2とCに対する賃金の総支給額を平等にすることによって本件の抜本的な解決を図ったことを理由に前命令を履行する必要がなくなった旨主張するが、これらのことは、前命令の履行を不要とする理由には当たらない。

以上のことを前提に、前命令確定月以降令和元年6月支給分までの月平均時間外労働時間数を比較すると、Cの時間外労働時間数は、全期間の平均でA2の3.7倍となっていることから、会社が、毎月の時間外労働について、常態的にA2とCとを差別的に取り扱っていたことは明らかである。

  • (2) 継続する行為
    労組法第27条第2項所定の「継続する行為」とは、行為自体は複数であっても、全体として一個の不当労働行為が継続している場合、すなわち、継続して行われる一括して一個の行為を含むものと解するのが相当である。本件では、時間外労働について公平に取り扱わなければならないとした前命令が確定し、同旨の和解条項を含む別件訴訟に係る和解が成立し、前命令の不履行に係る過料の決定が最高裁における特別抗告の棄却をもって確定したにもかかわらず、会社が時間外労働に係る差別的な取扱いを継続してきたという特殊事情に鑑みれば、前命令確定後の会社による毎月の時間外労働に係る差別は、会社の姿勢を体現したものとして相互に関連し、その目的、態様及び効果の同一性があり、時間的接着性も認められる。

よって、かかる特殊事情のある本件では、平成28年10月支給分以降本命令書交付の日までの間になされた時間外労働に係る差別の全体を以て、一個の行為と評価するのが相当である。

以上より、本件では、会社のなした毎月の時間外労働に係る差別を内容とする不当労働行為は、その全体を以て「継続する行為」と評価すべきであるから、労組法第27条第2項の除斥期間は適用されない。

  • (3) 結論
    会社の時間外労働についてのA2とCとの差別的取扱いは、A2が組合員であるが故をもって行われた不利益取扱いであり、労組法第7条第1号に該当するとともに、同条第3号の不当労働行為にも該当する。

3 審査の経過

調査6回、審問2回

令和2年5月14日の公益委員会議で、全部救済命令を発することを決定

4 命令書全文(PDF形式)

命令書全文(PDF:1,245KB)

お問い合わせ

部署名:労働委員会事務局 審査課

電話:078-362-3821

FAX:078-341-4564

Eメール:rodo_shinsa@pref.hyogo.lg.jp