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更新日:2020年7月28日

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平成30年(不)第6号事件の命令概要

兵庫県労働委員会は、令和2年7月16日、標記事件に係る命令書の写しを当事者に交付しました。その概要は次のとおりです。

1 当事者及び申立要旨

  • (1)申立人X組合ほか2名
  • (2)被申立人Y学園
  • (3)申立要旨
    • ア 申立日
      平成30年7月31日
    • イ 請求する救済内容(労働組合法第7条第1・3号)
      • 原職復帰
      • 不利益取扱いの撤回
      • 支配介入の禁止
      • 文書掲示、文書交付

2 命令要旨

〔主文〕

本件申立てを棄却する。

〔事件概要〕

本件は、被申立人Y学園(以下「学園」という。)が申立人X組合(以下「組合」という。)の組合員で、短大の准教授ないし助教を、それぞれ、平成30年4月1日をもって教授ないし講師に昇任させなかったこと(以下「本件不昇任決定」という。)が、組合員らに対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するとして、救済申立てがあった事案である。

〔判断要旨〕

  • (1)本件不昇任決定に至るまでの労使関係
    組合の上部団体の組合員に対する大学への入構拒否及び忘年会における、組合活動としての訴訟提起を批判する理事長らの発言については、学園が本件不昇任決定前に組合を嫌悪していたことを推認させる事情として認めることができる。
  • (2)本件不昇任決定と組合員であることとの関係
    大学の人事は、大学の自治のうちの最も基本的かつ重要な事項であることからすると、大学は、人事について広範な裁量権を有しており、この点に関する大学の決定は、最大限尊重されるべきである。そして、教授会は、大学の自治を担う中心的な組織であり、また、教育研究能力等について専門的・個別的判断を行う機関であることからすると、教授会は、教員の教育研究業績の評価についての裁量権を有しているものと解するのが相当である。そうすると、申立人らを昇任させなかったことが、不当労働行為意思に基づくものであるかどうかの判断に当たっては、教授会ないしは教授会における教育研究能力の評価を基にしてなされた学園の決定判断が合理性を欠き、裁量権の逸脱といえるかどうかを判断基準とするのが相当と考えられる。

組合らは、業績が正しく評価されなかった理由として、審査委員会及び教授会の審査手続に瑕疵があった旨主張するが、申立人らの昇任の可否の決定判断において、裁量権の逸脱があったとは認められない。よって、本件不昇任決定が、不当労働行為意思に基づくものであるとは認められないので、本件不昇任決定が、組合員であるが故の不利益取扱いであるとは認められない。

  • (3)本件不昇任決定後の状況
    本件不昇任決定の翌年度に、5人の非組合員の昇任が認められたが、学園では、新キャンパスを開設することとなっていたので、新規採用ではなく、昇任によって、必要な職位の教員を確保したことは、学園の裁量の範囲内の行為であると認められる。

また、上記5人は、いずれも自己推薦手続を取っていたのに対し、申立人は、自己推薦手続を取るよう勧められていたにもかかわらず、手続を取らなかったことからすると、自己推薦手続を取った者の中から学園が昇任させたことに特段の不合理はなく、申立人が組合員であるが故に、教授への昇任が認めらなかったということにはならない。なお、本件申立てと学内における昇任申請とは全く別の手続なので、本件申立てをしていることをもって、昇任申請ができない理由には当たらない。

さらに、本件不昇任決定後に本件昇任規則等が改正されたが、それは、運用結果を踏まえて改正されたものと認められ、当該改正が非組合員を昇任させるために行われたとの組合らの主張は、推測に過ぎない。

  • (4)不当労働行為の成否について
    本件不昇任決定に至るまでの労使関係をみると、前記(1)のとおり、学園が組合を嫌悪していたことを推認させる事情は認められるものの、これらの事情は、組合らが本件において救済を求める内容とは直接的な関係はなく、本件不昇任決定がなされた過程に、裁量権の逸脱があったとの事情が認められない以上、本件不昇任決定が、申立人らが組合員であることや、申立人らの組合活動を理由とするものであったとは認められない。

したがって、本件不昇任決定が、組合員であること、ないしは正当な組合活動をしたことを理由とした不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。

3 審査の経過

調査9回、審問2回

令和2年7月9日の公益委員会議で、棄却命令を発することを決定

4 命令書全文(PDF形式)

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