更新日:2023年3月27日

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局長メッセージ(令和4年12月)

    実りの秋を迎え、週末の丹波は観光客でどこも賑わいをみせています。秋の味覚や紅葉を求めて、都市部から多くの人がやってきています。丹波篠山市の調べでは、10月の同市城下町地区への訪問客数は約70万人と、過去3年間で最高を記録したそうです。

    こうした観光客の増加とともに起きるのが渋滞です。10月の週末には、丹南篠山口インター周辺を中心に、朝夕、車の長い車列ができていました。地元の一部の方は、これを「黒豆渋滞」と呼んでいるそうです。迂回路の掲示などにより、以前に比べると渋滞は幾分緩和されたそうですが、秋のハイシーズンにおける渋滞対策については、今後さらに検討していく必要があります。

   この渋滞への対応策としては、まずは公共交通機関の利用促進が挙げられるのですが、その公共交通の利用者は近年減少傾向にあります。モータリゼーションの進展だけでなく、長期的には人口減少、短期的にはコロナ禍が利用者減少の要因となっています。今年6月の県民局長メッセージでJR加古川線の存続・活性化問題を取り上げましたが、公共交通の維持は、交通機関(鉄道・バス)、路線を問わず大きな課題となっています。

                                                   石生駅 

              石生駅に停車する丹波路快速、特急こうのとり、WEST EXPRESS銀河(2022.7.1)

   基幹路線であるJR福知山線(丹波大山駅~丹波竹田駅)でも、1995(平成7)年に178万人あった乗車人員は、コロナ禍前の2019(令和元)年には94万人と半数近くにまで減少しました(図1参照)。コロナ禍以降、乗車人員はさらに減少し、2021(令和3)年には77万人と、コロナ禍前に比べ2割近く減っています。2021年3月13日より丹波管内の福知山線各駅にICOCA対応改札が導入されたのを機に、キャンペーンを展開し利用促進を図っていますが、なかなか乗客増に結びついていないのが現状です。

         福知山線乗客数グラフ

                              図1 JR福知山線(丹波大山駅~丹波竹田駅)の乗車人数の推移(兵庫県資料)

 

   路線バスも長期的に輸送人員の減少傾向が続いています。丹波市では、2004(平成16年)年度には、19万6,974人あった輸送人員は、2020(令和2)年度は48,681人と、4分の1にまで落ち込みました。

                                                              神姫バス  路線バス(ウイング神姫)

   しかし、路線再編に加え、丹波市が高校生への通学定期券購入補助や中学3年生等への神姫バスICカード乗車券NicoPaの配布などを行ったことで、2021(令和3)年度には、柏原~青垣間を中心に利用者は増加し、輸送人員は72,390人と、対前年度比48.7%の大幅増となりました(図2参照)。

   丹波市では、このほかにも路線バス対策として、低床バス新車の投入やバス路線の延伸などにもあたっています。この12月2日から1月末までは、社会実験として、市島地域と丹波医療センター間の路線バス運行も実施します。

 一方、丹波篠山市でも、路線バス((株)ウイング神姫)においてNicoPa利用者への上限運賃制度(上限200円)を導入を行っています。この制度導入と高校生が登下校にバスを利用できるよう路線変更やダイヤ改正を行ったことで、利用者数は増加傾向にあると伺っています。また、将来的な利用を見込んで、今年度中に市内中学3年生及び特別支援中学部3年生にNicoPaカードの配布を行う予定だそうで、今後さらなる利用者増が期待されています。

       路線バスグラフ                                                                             図2  丹波市内路線バス乗車人員の推移(丹波市資料)

 

   両市では、鉄道・バスの利用促進に取り組むだけでなく、路線バスの走らないエリア等でも独自に足の確保支援にあたっています。丹波篠山市では、2007(平成19)年度からウイング神姫に委託して、A(北西部方面)、B(東部方面)、C(南西部方面)の3ルートでコミュニティバス(愛称:コミバス ハートラン)を運行しています(2021(令和3)年度年間乗車人数5,441人)。また、路線バスが撤退した火打石地区でデマンド型乗り合いタクシーを市、タクシー会社、地区で構成する協議会で運営しています。丹波市でも、2011(平成23)年以降、デマンド型乗合タクシーを導入し、現在市内6地域内で週4日、それぞれ1日あたり7便運行しています(2021(令和3)年度年間利用者数24,993人)。

                                    丹波篠山市コミュニティバス              デマンドタクシー

            丹波篠山市コミュニティバス(コミバス ハートラン)  デマンド(予約)型乗合タクシー(丹波市)                                

 このほか、両市では路線バスやコミュティバス、乗合タクシーのルート外となる地域で、既存の公共交通と居住地の間をつなぐ自家用有償旅客輸送※1を行っています。丹波篠山市では、西紀中、西紀北、大芋、後川の4地区で市がワンボックスカーを貸与のうえ、地域運営協議会に委託し実施しています(令和5年1月からは村雲地区でも実施予定)。丹波市では鴨庄・吉見地区で、NPO((特)鴨庄)が週3日自家用有償旅客運送(鴨庄ふれあいバス)を実施しています。

 ※1市町村やNPO法人等が、交通空白地において、当該地域の住民、観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送を行うもの

 

                           にこにこ号                   鴨ノ庄ふれあいバス

                     自家用有償旅客運送出発式(丹波篠山市:大芋にこにこ号)    自家用有償旅客運送(丹波市:鴨庄ふれあいバス)

 

 コミュティバス、乗合タクシー、自家用有償旅客輸送の利用人員については、コロナ禍で一旦減少した路線・地区が多かったものの、昨年度は総じて回復傾向にあります。これら生活交通は、高齢者等の買物、通院など暮らしの足として欠かせない役割を担っており、今後も効率的・効果的な運用により維持・利用促進に努めていく必要があります。

   地元住民の方がドライバーを務める自家用有償旅客輸送については、高齢化が進むなか、ドライバーの確保も課題となっているそうです。今後、タクシー、バスなど交通事業者からのドライバー派遣なども選択肢に入れておく必要があるのかもしれません。こうした課題に対し、地域公共交通会議等の場で地域と交通事業者、行政が連携して解決策を探っていくことが望まれます。

    一方、丹波県民局では中長期を展望し、「丹波2050地域ビジョン」のシンボルプロジェクト「スマートコミュニティ・プロジェクト」において、移動支援等の地域課題に技術面から取り組もうとしています。同プロジェクトでは、暮らしやすい地域社会の実現に向けたスマート技術導入のあり方について研究会を立ち上げ、IT事業者、有識者、地域団体、行政の参加のもと、スマホアプリを活用した効率的な配車システムの開発やローカルMaaS※2の可能性等について議論しています。

※2 公共交通を含む複数の移動関連サービスを連携させ、検索・予約・決済等を一括で行うサービスのこと。Mobility as a Serviceの略称

 

   現在、全国の自治体では、国のデジタル田園都市国家構想推進交付金等を活用し、移動支援に係る様々な社会実験が繰り広げられています。スマートコミュニティ・プロジェクトでも、研究会の提言をもとに、近い将来、モデルコミュニティで移動支援の実証実験を行い、技術導入・実装の可能性、効果を探ることを計画しています。

   かつては夢のように思われていた自動運転も、2023年度から道路交通法が制度改正され、ドライバーがいない自動運転となる「レベル4」が公道で可能になります。また、2025年の大阪・関西万博では、空飛ぶクルマが万博会場と各地を結ぶ計画が公表されています。概ね10数年後には、完全自動運転や空飛ぶクルマの都市部での運行も可能になると予測※3されています。

※3 出典:「第11回科学技術予測調査」(2019)⽂部科学省科学技術・学術政策研究所

 

   「丹波2050地域ビジョン」では、その将来像において、2050年には丹波の空を空飛ぶクルマが飛び交い、いつでも、どこでも行きたいところに行ける時代になると展望しています。空の移動革命による移動のパーソナル化は、まだ少し先の話になるでしょうが、移動しやすい地域社会の実現には、日々進歩を遂げている技術の可能性を積極的に追求していかねばなりません。丹波県民局でも、スマートコミュニティ・プロジェクトのなかで、地域に見合った技術の発掘、検証を進めることで、すべての人が容易に移動可能な、「移動格差」のない地域社会の実現に貢献していきたいと考えています。

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   新型コロナの新規感染者数が再び増加傾向にあり、第8波に入りつつあります。また、これから冬の時期を迎えて、季節性インフルエンザとの同時流行も懸念されています。今一度、基本的な感染対策の再徹底のほか、インフルエンザを含めた積極的なワクチン接種をお願いします。

お問い合わせ

部署名:丹波県民局 県民躍動室

電話:0795-72-0500

FAX:0795-72-3077

Eメール:tambakem@pref.hyogo.lg.jp