更新日:2023年3月28日

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局長メッセージ(令和4年5月)

 コロナ禍のなか、地方回帰の流れが着実に進んでいます。その証左に、総務省が4月15日に発表した人口推計(2021年10月1日時点)(外部サイトへリンク)では、東京都の人口が26年ぶりに減少に転じました。

 ここ丹波でも、移住者の数は増加の一途を辿っています。令和3年度の移住者数は371人と、過去最高であった令和2年度(225人)を大きく上回りました。今後も、空き家等の供給が続けば、自然と共生する暮らしや、時間や場所にとらわれない働き方などを求めて丹波の地にやってくる人はさらに増えていくと思われます。

 実際に丹波に移住された方の移住動機は様々ですが、そのなかには、丹波の農の魅力に惹かれて移り住んだ人も少なからずおられます。令和2年度のデータをみると、丹波地域の新規就農者は61名(前年度33名)にのぼりましたが、就農経緯調査からその約4割が移住者であったと推計されています。

 この丹波で新規就農への入り口の一つとなっているのが、2019年4月に丹波市市島町に開校した「丹波市立農(みのり)の学校」(外部サイトへリンク)です。

※学校運営及び施設運営は指定管理業者である(株)マイファームが行っています。

 農の学校では、新規就農を目指す人たちが1年かけて栽培技術から販売、農業経営、農村文化までをトータルで学び、技術・知識取得にあたっています。小雨の降りきしるなかではありましたが、4月14日にこの農の学校を訪問し、担当者の方から直接お話をお聞きしました。

             農の学校 ロゴ    農の学校 施設  

                              丹波市立農の学校研修施設                              

 

 まず、農の学校の特色ですが、「有機農業を学べる全国初の公立全日制農業学校」が、学校のキャッチフレーズだそうです。学校の所在地である丹波市市島町は、いち早く有機農業に取り組んできた「有機の里」として知られています。その歴史は約半世紀に及び、地域には有機農業の人材、ノウハウが蓄積されています。農の学校では、生徒達がこの地域の農家の支援を得ながら、実習ほ場で有機農業の栽培技術を学んでいます。

        農の学校 ほ場     農の学校 座学 

           丹波市立農の学校実習ほ場              座学講習の模様

 農の学校には、丹波地域、兵庫県のみならず各地から生徒が集まっています。第1期生から第4期生まであわせて65名が入学していますが、市内出身者は殆どおらず、兵庫県からの入学者も3割程度にとどまっています。他は大阪府など近畿圏が多い(兵庫県とあわせると75%)ものの、北海道、東京都、富山県、愛知県、福岡県など遠隔地からの入学者もいます。

                  農の学校 人

                     全国から多彩な人材が入学

 生徒の平均年齢は、30代後半~40代前半ですが、毎年10代から60代まで幅広い年代層の方が在籍しています。男女比は概ね8:2とのこと。前職は様々で、なかには、大手企業でシステム・エンジニアとして働いていたような農業とは全く無縁の経歴の方もおられますが、全体に共通するのはオーガニック、有機に関心が高いことだそうです。

 一方、出口の就職状況(計43名:第1期~第3期)をみると、課程を修了した生徒のほぼ全てが、何らかの形で農に関わっています。内訳は独立就農が18名、雇用就農が14名、半農半Xが4名、楽農が4名、その他(バイヤー等)が3名となっています。

 そして、特筆すべきなのが、丹波市内への就農状況です。修了者の約6割にあたる25名が市内で就農しています。市内出身者が少数であることを考えると、これは大きな成果といえるでしょう。農の学校では、「丹波市及び周辺地域の農業の担い手となる人材を育成する」ことを運営方針に掲げていますが、出口実績をみる限り、十分そのミッションを果たしていると評価できるでしょう。

 このように市内への就農が進んでいる要因としては、卒業後に向けた分厚いサポートの存在がまず挙げられます。市内就農であれば、農地取得にあたっての地権者とのマッチングや手続き等をサポートしてもらえるほか、卒業後も講師やスタッフから栽培技術・経営支援を得られます。また、市の認定新規就農者等育成支援事業(外部サイトへリンク)で家賃助成や農業機械・施設導入経費の一部助成を受けたり、「たんば”移充”テラス(外部サイトへリンク)」で住まいの斡旋等の支援を得たりすることができます。

 一方では、在学中からの地域との交流も、市内就農を促す大きな要因になっていると思われます。生徒達は、カリキュラム(プロ農家研修・地域マスター農家研修)のなかで、常日頃から有機農業や特産品栽培に取り組んでいるプロ農家から教えを受けています。そうした縁で、休日には、地元農家の元に研修やお手伝いに行っている生徒もいるそうです。また、市内で就農する卒業生と在学生の交流会や御世話になった地域の方々に対する感謝祭なども催しています。このほか、農業+αということで、丹波の暮らしやなりわい全般を学ぶことのできるカリキュラム(地域のなりわい講座)もあります。こういった学びや体験交流の機会が生徒達の地域理解(地域への溶け込み)を促し、彼らを市内就農・定住へと誘っていると考えていいのかもしれません。

                  交流会

                      1期生・2期生の交流会の模様

 農の学校を訪問して数日後、第1期卒業生の河手大輔(かわて だいすけ)さんに職員がお会いしお話を伺うことができました。河手さんは大阪出身で、農の学校に入学する前は東京でプロダクションプリンター(商業用の大型プリンター)開発の仕事に携わっておられたそうです。

 河手さんが農業に興味をもったきっかけは、農業を営んでいた祖父母のもとでの農業体験だそうです。初めは趣味で農業に親しんでいた河手さんですが、農業の担い手は今高齢者ばかりで従業人口が減っていることを知り、やり方次第ではチャンスがあるのではないかと思い、農業を仕事にする決心をしたと語ってくださいました。

 河手さんは、農の学校に入って、農業の基礎を学んだだけでなく、農業で生活をすることは甘くないという現実を知ったそうです。そこで、河手さんは学校で学んだ有機栽培にも関心があったものの、地産地消や観光の需要があり、生産者がまだそれほど多くないイチゴの栽培をめざすことにしました。

 卒業後、河手さんはイチゴ栽培を学ぶため、(株)アグリサポートたんばで研修生として働き、2年かけてITを活用したハウス栽培の技術を習得されました。そして、この4月に独立就農し、これから柏原町北中地区にハウスを新設し、イチゴ栽培(13a)を始められます。

                  イチゴハウス

                先進的な環境制御技術を導入したイチゴハウス((株)アグリサポートたんば)

 河手さんになぜ丹波市で就農したのかお尋ねすると、実家の大阪に近いという理由とともに、就農サポートの充実を挙げてくださいました。農地の紹介や農業経営計画の作成などで丹波市や兵庫県のサポートがあったおかげで、スムーズに就農することができたと仰っていました。

 河手さんに就農した現在の心境をお伺いすると、「イチゴ栽培は、収穫、育苗など1年間を通じてやるべき仕事は多いが、非常にやりがいがある仕事だと思っている。これからは、栽培技術だけでなく、販路開拓や資金調達など経営面でも自分の腕を試していきたい」と語っておられました。

                                                                  河手さん2               

                 イチゴ栽培に取り組む河手さん (後ろがハウス新設用地)

 今後の抱負をお聞きすると、JA直売所での販売やイチゴの観光農園の開設、丹波イチゴのブランド化などを挙げられました。現在、河手さんは丹波市内の若手イチゴ農家3名と一緒に「たんば苺一笑(いちごいちえ)」という名の自主活動グループを結成し、市内で勉強会やイチゴPRイベントなどを行っておられます。これからも、仲間とともに丹波市のイチゴを盛り上げていきたいと熱く語っておられました。

 今後、河手さんに続く新規就農者を増やしていくには、サポートの充実とともに、就農希望者にとって等身大のロールモデルとなる就農者自身による生の声、体感情報の発信が重要になります。県民局では、今後も様々な媒体を使って就農者の方に丹波の農や暮らしの魅力をありのままに伝えていっていただこうと考えています。農業は丹波の地域アイデンティティに不可欠な要素であります。持続可能な農業の実現に向け、引き続き農業振興、移住・環流対策の両面から新たな担い手の創出に取り組んでまいります。

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 まん延防止等重点措置区域の指定は解除されましたが、引き続き、感染防止対策の徹底にご理解、ご協力をお願いいたします。

お問い合わせ

部署名:丹波県民局 県民交流室

電話:0795-72-0500

FAX:0795-72-3077

Eメール:tambakem@pref.hyogo.lg.jp