更新日:2023年3月27日

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局長メッセージ(令和4年8月)

 今年の近畿の梅雨明けは6月28日と統計開始以来最も早く、梅雨はわずか14日間で終わってしまいました。このため、6月末時点では丹波でも水不足が懸念されていました。しかし、7月に入ると一転雨の日が多くなり、7月3日には、柏原で1時間雨量91ミリと記録的な豪雨に見舞われました。降り始めから同日午後7時にかけて、丹波篠山市北部では、24時間雨量が200ミリを超えたところもあり、道路、河川、水路、農地等に被害が発生しました。

 このような天候不順の折りにいつも心配されるのが作物の生育です。しかし、古来よりお天道様次第であった農業も今や、最新のテクノロジーでもって大きく変わろうとしています。人工知能(AI)が天気予報や過去の気象データ、衛星画像等を分析して、作物の生育診断・予測を行ない、防除、潅水、収穫などの最適なタイミングを教えてくれるようになっています。

 こうしたICT等の先端技術を活かした農業、スマート農業の導入が、今各地で進められています。その背景の1つには、人口減少・高齢化による農業生産の担い手不足があります。スマート農業の導入によって、農作物の生産安定・高品質化、農作業の省力・軽労化を図ることで、農業の持続的発展をめざす動きが加速しています。

 ここ丹波では、丹波農業改良普及センター(以下「普及センター」という。)が中心となって様々なスマート農業技術の実証実験に取り組んできました。その結果、スマート農業の展開において、現在丹波は県下のフロントランナーとなっています。

 普及センターがスマート農業に取り組みはじめたのは平成30年度でした。この年、黒豆・山の芋の栽培にあたって、AIを利用して病害虫(食害痕)の検知を試みるとともに、ドローンによるピンポイントでの農薬散布試験を開始しました。翌令和元年度からは、RTK(高精度測位システム)を利用して、ドローンの完全自動飛行・農薬散布に挑戦し、2年度以降、12の経営体がRTK基地局を利用した散布に参加しています。

     ドローン        センサー

       ドローンによる薬剤散布                   土壌センサー

                         [土壌水分、電気伝導度(EC:肥料分量を把握)、地温の3項目を計測] 

 

 普及センターでは、平成30年度より土壌水分センサーを利用した適期潅水の実現に向け、センサーの測定精度向上にも取り組んできました。現在は、管内12箇所にセンサーを設置し、メルマガやアプリで土壌水分含量等の情報提供を行い、黒大豆、山の芋の圃場がそのデータを利用しています。

 水稲では、マルチスペクトルカメラを利用して生育診断を行い、その結果にもとづき、ドローンによる可変施肥(場所・地点ごとに肥料の量を変えること)に取り組んでいます。また、ドローンによる直播(ドローンに種子を搭載し、圃場に対して直接種子を打ち込む)実験にもあたっています。令和4年度は、発芽率の高いコーティング種子(粘土鉱物等で包んで丸く成形し、播きやすくした種子)を使ったドローン直播に6つの経営体とともに挑戦しています。

 ※複数(=マルチ)の波長(=スペクトル)の反射率を数値化できるカメラ。植物体が反射する近赤外線と赤色光を測定し、植物の生育状況を診断できる。

 営農管理の面では、当初GIS(Geographic Information System)を利用した簡易な営農記録シートの作成を支援していましたが、現在はスマートフォンやタブレットで手軽に使える営農支援アプリの実用性の検証に取り組んでいます。アプリでは、気象データや空撮データ等による生育予測や早期警戒情報(高温警戒、病害発生リスク等)等など、農作業に関わる情報を‘みえる化’しています。

 ※多様なデータを地理情報と結び付けて視覚的に表現するシステム

 現在15の経営体がこの営農アプリを利用していますが、今回利用者のお一人に感想をお伺いすると、「アプリの使用によって、わざわざ出向かなくても圃場全体の状況を知ることができるようになった。これまで感覚だけでしていた農業が感覚とデータの両方で行なえるようなり、作業の安心感が増した」とその機能を高く評価していただきました。具体的なメリットとしては、過去のデータを残せ、圃場ごとの特性を把握しやすくなる点や、衛星データ等から圃場の生育ムラがわかり、肥料をピンポイントで散布できる点などを挙げておられました。

 アプリ画面  アプリ画面右       アプリ情報   農業者

   営農アプリ画面           営農アプリの提供情報         圃場で営農アプリをみる農業者

 

 普及センターでは、これまでご紹介してきた技術実証の結果を踏まえ、現場実装・運用が可能で、導入効果が高い技術-ドローン農薬散布技術、土壌水分センサー、GIS利用の営農管理技術等-を選定し、それらを地区全体で共有する取組を令和3年度から進めています。

 「地域連携シェアリング」と呼ばれるこの取組は、現在、丹波篠山市味間(あじま)地区と小多田(おただ)地区でモデル的に進められています。両地区では協議会をそれぞれ結成し、複数の集落、大規模農家間でのスマート農業機械の共同導入・利用を促進するとともに、機械・システムを操作できる人材を地区全体で育成、プールしようとしています。

 

           ドローン農家   ドローン農家右

                 ドローン薬剤散布に取り組む地区農家の方々

 一方、普及センターでは農薬散布等の農作業の省力・軽労化に向け、令和4年度から農薬散布用ドローンの広域運用・連携体制の構築にも着手しています。JA丹波ささやまと連携して、大規模ドローン運用拠点を整備し、12ヵ所で試行的に散布を行います。今後、小回りが利かず、ダウンウオッシュ(下向きに発生する気流)の作物への影響等が懸念される無人ヘリコプターから、高精度自動飛行・散布が可能なドローンへの移行を進め、作業効率の向上と黒豆等特産物でのドローン防除の普及拡大を図ります。

 丹波篠山市内では、大規模運用拠点が市内全域をカバーするほか、地区協議会、大規模経営体等が中規模拠点として地区単位のドローン防除を担う体制の整備を進めています。計画では、令和6年度段階で水稲・黒大豆・山の芋の全作付面積の60%においてドローン防除を行なうことを目標にしています(令和2年度:30%)。

 また、普及センターでは、法面などでの草刈りの省力・軽労化に向け、令和2年度よりリモコン除草機の能力検証をあたってきました。令和4年度は、検証結果を踏まえ選定した、急斜面にも対応できる低コスト・コンパクト設計の国産リモコン除草機を5つの集落に長期レンタルし、草刈り作業の能力・時間など、その実用性評価を行っています。

 除草機     除草機前新 除草機後新

       除草ロボット                     除草前(左)と除草後(右)

 

 今回、実際にリモコン除草機を試した農業者の方は、「自分たちで刈るより体力面は楽。ため池の近くや急斜面でも安心して使用できるようになると、もっと手軽になる」と仰っていました。現在、リモンコン除草機の価格は100万円を超えていますが、価格がさらに下がり、操作性が一段と向上すると、今後普及が一挙に進むと思われます。

 スマート農業の拡大は、農作物の生産安定や農作業の省力・軽労化だけでなく、担い手の確保という面からも期待されています。お話を伺った農業者の方からは、スマート農業の導入に伴い、若い世代や女性の農業従事者も増えるのではないか、機械操作やデータを扱うのが得意な人なども農業に携わるようになるのではないかといった声が聞かれました。今後、県民局では農業者の方以外にも、スマート農業の展開を広く発信していきたいと思います。

 県民局では、スマート農業に関しては、既に当初の目標を上回るペースで技術実証を進めていますが、量的な普及拡大と同時に、丹波の風土にあった丹波型スマート農業というものの確立を図っていきたいと考えています。すなわち、スマート農業の技術や人材を地域全体で共有し、経営規模にかかわらず、誰もがスマート農業に取り組める仕組みの構築をめざします。それにより、後継者がおらず、担い手不足に悩んでいる小規模農家などでの利用拡大を実現したいと思っています。また、シリ丹バレー(外部サイトへリンク)のプラットフォームのもと、農業者とIT事業者、製造事業者等様々な事業者間や産学官民の連携を推進するなど、丹波がこれからもスマート農業のフロントランナーであり続けられるよう様々な取組を進めてまいります。

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現在県内では、新たな変異株への置き換わりなどにより、新規感染者数が過去最多を更新し、流行の再拡大がみられます。引き続き、基本的な感染対策の徹底やワクチンの積極的な接種にご理解、ご協力をお願いいたします。

 

お問い合わせ

部署名:丹波県民局 県民躍動室

電話:0795-72-0500

FAX:0795-72-3077

Eメール:tambakem@pref.hyogo.lg.jp