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丹波篠山市で、障害福祉サービス事業所「たすきファーム」を営む橋元工さん。市役所職員から転身し、黒豆や野菜づくりを通じて、障害のある人の「働く」を支えています。畑から生まれる人とのつながりや、農福連携にかける思いを聞きました。
53歳で市役所を辞めて、この道へ
丹波篠山市役所で働きながら、20年ほど前から有志で畑を借り、農業を続けてきました。そこで障害のある人やひきこもりの経験がある人たちと一緒に黒豆を育てるなど、農業を通じた交流もしていましたが、管理職になり立場が上がるにつれて、だんだん当事者の皆さんとの距離が遠くなっていったように感じました。「自分がライフワークとして本当にやりたいことは何だろう」と考えたとき、やっぱり目の前の人と直接関わる仕事がしたいと思い、市役所を退職し、障害福祉サービス事業所「たすきファーム」を立ち上げました。

「たすきファーム」の名前には、人と人をつなぐ思いが込められています。
農業だから、自然と話せることがある
農作業には、心が穏やかになり精神的に安定する効果があると感じています。それに、畑ではずっと顔を合わせて話す必要がありません。同じ方向を向いて作業しながら、「最近どう?」と自然に話ができる。ひきこもりを経験した人が、自分の悩みをぽろっと話してくれることもあります。農業だからこそ生まれる距離感があるんだと思います。
一人一人に合った「働く」を畑で
畑では、黒豆をはじめ、ミニトマトやピーマン、きゅうりなどを栽培しています。育てるだけでなく、収穫して販売するところまでが仕事です。もちろん、全員が畑仕事を得意としているわけではありません。外での作業が難しい人には、企業から受けた内職をしてもらうなど、それぞれに合った仕事をつくっています。

採れたての野菜はどれもつやつや。おいしそうですね。
「真っ赤なトマト」も、人によって違う
農業ならではの難しさもあります。天候によって「今日はこの作業をする予定だったけれど、別の作業にしよう」と急に予定が変わることがあります。予定変更が苦手な人もいるので、どう説明すれば安心して作業してもらえるのか試行錯誤しました。例えば「真っ赤なトマトを採って」と言っても、「真っ赤」の基準は人によって違います。一人一人にどう伝えれば分かりやすいのか。利用者さんと一緒に働きながら、私たちも学んできました。

野菜の様子を一つ一つ確認。毎日の積み重ねが大切なんですね。
畑仕事が、地域を支える力になる
私たちの仕事は、自分たちの畑だけではありません。地域の人から依頼を受けて草刈りなども行い、現在は約5haの農地管理に関わっています。地域では高齢化が進み、農地を管理する人が少なくなっています。そこで利用者さんたちが力を発揮してくれる。「支援される人」ではなく、地域の農業を支える一人として活躍しているんです。近くの農家さんからも、利用者さんが一生懸命作業している姿を見ると「元気がもらえる」と言ってもらえます。一緒に農業をすることで、地域全体が少し明るくなっていく。そんな手応えを感じています。
誰でも始められる農福連携を
農福連携というと、大きな農地や特別な設備が必要だと思われるかもしれません。でも、私は敷居の高くない「誰でも始められる農福連携」にしたいと思っています。小さな規模でも、地域にある農地を使い、地域の人とつながりながら続けていくことはできます。何かを急に大きくするのではなく、まずは今の活動をしっかり続けていきたいです。

作業の合間には笑い声も。畑はいつも和やかな雰囲気です。
「毎日、楽しくてしゃあない」
今は毎日が楽しいです。24時間365日、この仕事のことばっかり考えています。もちろん、利用者さん同士でトラブルになることもありますし、大変なこともあります。でも、それも全部含めて幸せなんです。畑で一緒に働いて、地域の人とつながって、利用者さんが誰かの役に立つ。そんな日々を、これからも続けていきたいと思っています。
大きく育つとうれしい!
週5日通っている事業所では、野菜の収穫や内職などいろいろな作業に取り組んでいます。休憩時間は、事業所の前の川で魚を見て過ごしています。水やりを頑張った野菜が大きくなったらうれしいし、自分たちが育てた野菜をお客さんに買ってもらう販売作業はとても楽しいです。

この日も暑い中、黙々と作業を進めていました。
農福連携との出会い
皆さんは「農福連携」という言葉を聞いたことがありますか。農林水産省によると、「農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現していく取組」と説明されています。農福連携という言葉が使われ始めて16年が経過しますが、私が農福連携と出会ったのは2021年でした。2017年に県立淡路景観園芸学校で、恩師である豊田教授から様々なことを教わり、園芸療法士の資格を取得しました。その後、ご縁があり、農福連携研究の第一人者である千葉大学の吉田教授と出会い、私の農福連携の研究が始まりました。

農福連携の素晴らしさに引き込まれていきました
実際に現場に行って、実践者の皆様や福祉事業所の利用者と話をするたびに、農福連携の素晴らしさに触れ、引き込まれていきました。人手不足の農村地域において、地域の農業を障害者や高齢者が支えていることや、その現場で農業特有の自然や植物による癒し効果により、利用者が元気になっていくことに気づかされました。こうした取り組みをより多くの県民の皆様に知ってほしいと思い、今回の企画を提案させていただきました。皆さんのお住まいの地域でも、特色のある農福連携が行われていることと思います。少し目を向けて、農福連携で栽培された農産物や加工品を手に取ってみてください。

県の農福連携の取り組み
農福連携とは、農業と福祉が連携し、農業経営の発展と障害者の社会参画を促す取り組みです。県では、農業経営体や福祉事業所に対して、専門の相談窓口を設置して事業者同士をマッチングしたり、専門家を派遣したりとさまざまな支援をしています。
【問い合わせ】県ユニバーサル推進課
【電話】078-362-3261
【ファクス】078-362-9040
詳しくはひょうごの農福連携の取組のページへ